銀行のサービスはコンビニになるかアマゾンになるか

 

年始の新聞はかつては大スクープの発表の場であったが、いまは平和な世の中で、ドカンとひっくり返るようなことが起きる余地がない。ここで「平和な」というのは文字どおりの意味ではなく、「よく管理された」という意味だ。

 

誰も知らないことを世の中に伝えるのはもはや報道の使命ではなく、築き上げられてきた筋道に従って世の中、社会・経済の変化を分析し、正しい理解を助けて、それプラス多少の先取りをするのが報道機関の使命とでもいうべきか。

「誰も知らないこと」を世の中に伝えるのはむしろ企業や個人の役割になってきた。私でもブログでこんな便利な発信手段を容易に持つことができた。情報ソースのサイトに行けばオリジナルの資料がリアルタイムで手に入る。分析力があればだれでも付加価値のある情報発信ができるようになってきた。

 

そこで今日のテーマは年末年始の報道にあった、銀行の口座維持手数料のハナシ。預金口座の維持条件をつけた商品はいままでもあったし、納税準備預金みたいに目的外支払いに対しては利息の非課税メリットをはく奪する、みたいなペナルティを課するケースもあった。定期預金の期日前支払いもいわばペナルティ付き。ただし銀行の再調達コスト(その預金が払い出されることで別の資金手当てが必要になり、そのとき金利が上がっていたら初めの預金者に補填を求める)まで見込んだケースは、個人相手の場合にはほとんど適用されない。

口座維持手数料を避けるには使わない銀行口座を解約して歩けばいい。しかし、転勤族の人を始めとして、子供の学校の支払だとか、町内会がどうだのとかで預金口座をあちこちで開くハメに陥り、それがそのまま残っている。銀行自体が、なんとか新規口座を作ってほしくてムリに頼んでくることもある。カードがあれば残高を極小まで落としてあとは放置してしまえばいい。遠くまで口座解約に出かけることが無意味。金融機関も使われない口座のことで目くじら立てることもなかった。

 

ところが、いわゆる休眠口座の公益活用の法律ができたからだろう、金融機関としては今後は眠っている口座を起こさねばならなくなり、しかも収益を生まない口座はコストでしかないということも、マイナス金利の世界ではっきりと認識されてきた。この局面で手数料設定をPRすれば、口座の整理が進むか、手数料が取れるか、どちらに転んでも損はない。預金者の抵抗がある口座維持手数料を広めるには、ここがいいタイミングとみたのだろう。

 

手数料は取れるものなら取ってもいいと思うし、現にATMの時間外手数料等で無頓着な預金者を搾取してきたのだから、まあいいかもしれない。けど年金受取口座でも手数料を取るのかとか、いろんな問題は出てくるだろう。メガと地銀で同じロジックになるかも分からない。メガBKは個人の流動性口座での生活資金の取り込みはもう要らないのではないか。しかしコミュニティBKではそうは行かないだろう。

 

預金者はどう対策すべきか。まずは銀行口座の要不要の判断だ。ひとつもないと困るだろうが2つ以上は要らないだろう。日本は全く預貯金口座のない人はほとんどいないと思われるが、米国等では口座のない人に金融サービスをどう提供するかについても、ずいぶん考えられてきた。生活保護にあたるおカネはフードスタンプとか、現物支給に近い仕組みも使われてきた。小切手社会では、それさえキャッシングできれば銀行など要らないのである。

 

日本は金融機関が口座を開くのにハードルがなかったので、その問題はなかった。これからは日本でもそういうナショナルミニマム論みたいなのが出てくること必定。ゆうちょ銀行はこれにどういう対応をするのか、外国人労働者はどうやって給料を受け取っているのか、実は知らないことだらけで、海外送金もウエスタンユニオンみたいな業者が扱うのが一般的になってきた。ついに日本でもライフラインとしての金融サービスが議論される時代となってきた。