一時所得の使いみちは意外なところに その4

「年金」と名がついても終身支給でないものは、単なる税制優遇のある貯蓄だと理解しておいた方がいい。私は「年金風」貯蓄と呼んでいる。

昔は(いまでもあるが)財形年金という制度があり、いわば厚労省管掌の貯蓄優遇税制である。金利の自由化後でも固定金利を付利する限度は個人預貯金では10年であり、いまどきの経済情勢では有意なプラスの金利は存在しないので、優遇貯蓄のメリットはとうに消えてしまった。どれだけの人が財形年金を受け取っておられるか、よく分からないものの、この商品では明確に自分が貯めたおカネの払い戻しなので受け取りに課税はない。昔のマル優と同じレベルの貯蓄優遇制度ともいえる。

 

前にも書いたことで繰り返すが、いまの個人型確定拠出年金では、100%自分のおカネを受け取るのに公的年金の雑所得として課税されるのである。そのロジックは、拠出するときの所得控除を認めているからだろう。控除を認めることでいったんお上のおカネに吸い上げられるので、また給付のときに課税するのだと。

だから確定拠出年金のメリットを極大化するためには、

①自分の所得税率の高いときに拠出する=還付される税金が多い

②運用益を上げる=どんだけ稼いでも課税されない

③自分の所得税率の低いときに受け取る=払う税金は少なくする

国民年金の2階部分という制度上の立て付けから、個人型では60歳で拠出は終わることになり、受け取りは何年拠出したかで開始年齢が変わる。私の場合は62歳が受け取り開始年齢である。したがって60歳まではしっかり給与所得を稼いで、拠出部分の控除を受ける。並行して運用をなんとか回していって、62歳で受け取り始めたら公的年金の控除(そのときは70万円)内に収めればよい。そのときに収まらないのなら、繰上げで一部を受け取ることで一時所得50万円の控除枠も使えるのである。

 

もし自営の方で個人型でもっと大きな確定拠出年金のファンドを持っている方は、ヘタに受け取り始めるとどえらい課税をくらう可能性があり、いつからどういう取り方をするかよく検討してほしい。ずっと現役並みの収入のある方は、あとでえらい目にあうことにもなる。

また企業によっては確定給付年金のファンドを確定拠出年金に振り替えたなどして、退職時に確定拠出の大きな残高を持っておられる方もあるようだ。確定給付で受け取ろうと確定拠出で受け取ろうと、同じ課税方式だから同じことだと言えなくもないが、それでもなんとか自分で受け取り方をコントロールできるなら、制度が許す限りの節税をお勧めする。

 

以上ゴタゴタ書いて分かりにくいかも知れないが、「確定拠出年金」コラムと「一時所得」コラムを遡ってお読みいただけますと、だいたいの理解はして頂けると思う。ここを分かるための税制の知識は最低限、老後を損しないために必要なレベルなので、それはしっかり基礎知識として持っていた方がいい。

このハナシは、商品が保険会社提供になったときに、少しだけ考え方を修正しないといけない。保険の共助性みたいな特性が入ってくるからで、最近話題のトンチン年金のような商品だともっと違うのかもしれない。その辺はこれから勉強して還元していきます。