明治安田生命のドル建て一時払い養老保険を解剖する

明治安田生命のドル建て一時払い養老保険を買ってみた。営業の人から金融商品を買うのはホントに久しぶり。25年前の年金保険の満期が近づき、その処理で(いわゆるお宝保険で大きな利益が出ているから)いろいろお願いしており、そのお返しの意味もある。11月のこのドル建て保険の予定利率は年3.3%。10年据え置けば、投資時の130%を超える米ドルが手もとに戻ってくる。外貨に投資しても、外貨預金ではちょっと為替が好転すると売ってしまいたくなる。少し腰を据えた外貨投資と位置付けた。

 

この商品は買ってみて分かったことがいくつかある。ネットでもいくつか商品性の紹介をしているサイトがあったが、少し情報を整理してみた。

 

 

 1.課税は金融商品と保険のハイブリッド

 

大むかし、金利が高かった時代に一時払い養老保険を買ったことを覚えており、当時は一時所得で控除が認められる50万円までのゲインに止まるよう、元金額を調整して売られていた。あれは何年ものだったろうか。その後、一時払い養老保険は保険商品ではなく金融商品だろう、ということからその後は利子課税と同じような課税方式となった。

今回の購入で分かったことは以下。知っている方にはくどいハナシで申し訳ございません。

  • 金融商品なみの源泉分離課税になるのは契約日から5年以内。5年超になるとその他の保険商品と同様の課税となる。
  • この商品のキャッシュフローは1回支払って、戻ってくるのも1回だけ。つまり預金のような利息もなく、債券のクーポンもない。だから購入時のドルがベースになって、満期の10年後まではいっさいゲインを認識しないのかと思っていた(実質は割引債=ゼロクーポン債だから)。しかし途中解約でも円に引き直して課税する。5年以内なら源泉分離課税、5年超では一時所得になる。
  • 満期まで持ったときは、満期日の為替レートで円換算してゲインを一時所得扱いで認識する。その時点でドルを実際に売る売らないは関係なく、未実現利益でも課税される。保険商品としての寿命が終わったときにいったん清算して、その後外貨預金のままで持つならその課税ルールに従う。

 キャッシュフローが1回ならゼロクーポン債と同じだが、割引債なら購入時に償還差益から源泉徴収される。一時払いでまとめて返還する保険はいずれか支払いが起きたときに課税が出てくる。

 

2.この保険を効果的に使うための考え方

 

ます採り上げのメリットは、

  • 予定利率が銀行預金に比べると高い。例えばソニー銀行のドル預金は3年もので年利2.5%。これに比べると年3.3%は有利。ただし将来の金利はどうなるか分からないので、実は低位固定となってしまうリスクも。
  • 2年据え置けばドル建てで100%戻ってくる。これは外貨預金なら当たり前だし、預金は金利も付くから銀行預金に比べるとこの保険にメリットはない。しかし他の保険商品に比べると悪くなく、常に投資したドルは100%手もとに戻せる。

デメリットはなにか。

  • 10年間も全くキャッシュフローを生まない。CFを生んだらそのときに課税される。いつ手仕舞うかがすべてという商品で、判断の難度は高い。
  • 為替が往復で1円(行き50銭、帰り50銭)抜かれる。

 この保険は買ってから最初の2~3年がまず勝負で、ここでドル高に振れているなら解約して円転するメリットが出てくる。しかし全く同じことを外貨預金でやれば、利息が取れてかつ為替差益も取れる。外貨預金の為替差益は雑所得なので、サラリーマンなら20万円までは無申告でOK。一方でこの保険を使えば金融商品並みの20%(+復興特別所得税)となる。少額でも課税されるので銀行預金に比べるとメリットは乏しい。

 しかし雑所得を申告する必要のある人(確定申告する人で総合課税の税率の高い人)には、ドル建て一時払い養老保険なら源泉分離で課税関係が終わるから、そのことはよいことかも知れない。

実質的な為替差益を投資信託や株式を通じて得ようとすることと同じ。ではあえて保険商品にするメリットはなにか。株や債券と違って、他の金利リスクやら政治・ビジネスなどのリスクから切り離されることか。

かりに数年後の大きなドル高を予想するとして、他のリスクに煩わされることなく、確実にその果実を小さな課税で得たいと思うなら、この商品は使える。外国株そのものや外国株式インデックスファンドで為替差益を狙っても、他のリスクも混入する。この養老保険なら為替リスクだけを切り出せる。

 

3.時期によって戦略を立て直す。

純粋にドルの高値を効果的に追えるものの、その有効期間は5年だけ。

まずは2年後に為替差益を大きく抜けるならいったん手仕舞って、再投資を考えるのがベストシナリオ。2~5年はそんな感じて見て行くのがベター。大きなドル高になるなら(なるとみるなら)手もとにドルを戻したらいい。

そのチャンスが到来せずに、契約後5年を過ぎると今度は保険商品として一時所得になる。今度は他の一時所得との見合いを測りながら、利益を出さねばならない。控除枠50万円を念頭に置けば、この保険の元金はせいぜい2百万円がいいところ。それで2割抜けるとしてゲインが40万円となるので、その辺が税のメリットの限度。

8年程度も経てば、もう10年の満期を意識した方がいい。償還は130%。30%も乗っかってくるのだから、よくよく見極めが必要。先行き円高が確実に見通せるならその程度の年限でも手仕舞ってもいいが、実際には7年から8年経過時点では、もう10年持ち続けるハラを括る方がいい。

この保険は自分の課税状況を確認しつつ、いつどうやって手もとに戻すか考えどころ満載。預け入れ限度は毎年2百万円でいい。狙いを絞り込める投資ツールとしては面白い商品。