WIN5史上最高額の4億7千万円馬券を狙った人

2月24日開催のJRAで、ついに4億7千万円もの配当が飛び出した。羨ましいとか、税金が大変だとか、勝負の実感に乏しい?コメントが飛び交っている。

 

私はWIN5を取ったことがない。24日も少しだけ買ってWIN1で終わった。当てたいが、少しずつ長く楽しめる競馬を目指しているので、当たったとしても10万円くらいの配当しかない組み合わせしか買ってない、と思う。

 

この4億7千万円を取った人が、例えばおまかせ(JRAの言う「ランダム」)で買った可能性は限りなくゼロに近いと思う。24日の対象レースの頭数から計算するとその確率は約26.6万分の1。総投票数は674万票だから仮に全投票がランダムだったとしても、25票程度にしかならない。

WIN5を初心者がお試しで買うことはあっても、馬券をやっている人なら自分の予想で買うはず。5つのRから2頭ずつ選んでも2の5乗で32通り、3頭ずつなら3の5乗なら243通りに跳ね上がる。50点程度の購入は当たり前で、そうだとすると購入者数は13.5万人。1票2票をランダムで遊ぶ人もいるから実数はもっと多いと思うが、とても26万票はないだろう。26万分の1を出せるほどは売れていないはず。

 

WIN5ファンで大きいのを本気で狙う人には、この2月24日は実は狙いやすいレース構成だった。最初の阪神10RすみれSと、最後の中山メーン中山記念は少頭数で、しかも勝つ可能性のある馬は絞られていたからだ。

すみれSは6頭立てで、実績から言えば勝てそうなのはアドマイヤジャスタとサトノルークスだけ。アドマイヤジャスタがモタモタしたが実際上位人気の1着2着で決まっている。しかし、最後の中山記念までの間に入る3つのRは、かなり荒れてもおかしくない。

中山10RのブラッドストーンSダート千二百Mは単勝万馬券ブービー人気馬が勝ったが、2走前は京都で勝ち馬と0.8秒差。来てもおかしくない。

次の小倉のメーンレースは芝千二百Mのレースで、前走着順が悪くてもそう時計の差はない。ローカル開催では馬の気持ちも変わってくるし、何からでも入れる。

阪神メーンは重賞だが、これも芝千四百Mで力のある馬ばかりだからなんでもあり得る。勝ち馬はクラシックに乗った馬(3年前のダービーでマカヒキの6着)で実力はある。とくにスマートオーディンの場合は勝ったレースの距離が千八百と二千二百だけ。千八を勝てる馬は千四に強いというのは割とあるハナシ。18頭の11番人気でも勝っておかしくない。

この3つのRはそれぞれ、16頭、14頭、18頭立てで全部買えば4,032通り、40万円強となる。最初のすみれSを2頭に絞ればここまで投資額の見込みは80万円強。で、最終関門の中山記念となる。何頭にマークするのか。

 

最近の中山記念ドバイWCへの壮行レースになっていて、強力メンバーが出てくる。今年は11頭立てとなったが、うちG1勝ち馬が5頭。それ以外に勝ち目があるのは中山得意のウインブライト。実際この6頭が上位人気を形成し、レースの着順も6頭で6着までを占めた。しかし勝ち馬は1頭だけで、それを外しては元も子もない。

仮にWIN5で6頭をすべて選べば、馬券は80万円×6=480万円強となる。WIN5の配当が500万円超えとなるのはざらで、3千万円から5千万円を狙える馬券だ。仮に6番人気のラッキーライラックの休み明けを嫌えば5頭で済む。5番人気のウインブライトは、例えば東京コースでなら切れるだろうが、ここ中山では怖くて切れない。私の仮説ではこの馬券を取った人はここで上位人気5頭に絞って、ラッキーライラックを切ったことになる。これで400万円馬券での大勝負だ。

ここまで書いた想定どおりだとすれば、この人は(チーム買いかもしれないが)、最初のすみれSをサトノルークスの勝利で割と楽に通過し、2つめの中山ダートで単勝140倍が来て大勝利を確信したに違いない。3つめの小倉メーンも12番人気と荒れてますます力が入るとともに、最終の中山記念を絞ったことが少し気になってくる。

4つめの阪神メーンも11番人気。ここで残り票数は(おそらく)この人の買った中山記念の5頭が残っただけだろう。そこまで予想で当てた人が複数名いるとは想定しにくい。そして、運命の中山記念がスタートする。人気どおり収まるか。

 

そう思って中山記念を見れば、4億7千万円を手にするまで「苦痛」がどんなものかしのばれる。ここで展開した仮説通り5頭選んでいたとして、その中に勝ち馬のウインブライトが入っていたのだから、たぶん切ったのはあのラッキーライラックだ。逃げ馬を交わしてラッキーライラックが内ラチを走る姿がどんなに映っただろうか。ディアドラもスワーヴリチャードも、エポカドーロにも勝てる感触はなかった。最後に来たステルヴィオは、届かない。ウインブライトの差し込みを待ちながらどんなに怖い思いをしたのだろうか。大勝負師に畏敬の念を抱かずにいられない。