健康保険組合の行方はどうなる? 制度自体が難解すぎる

年度末からこの時期は繁忙を極める。サラリーマンにはゴールデンウィークも良し悪しで、3月決算の会社なら6月の総会まで息がつけません。

 

企業の健康保険組合の解散が続いているとの報道がなされている。後期高齢者医療制度への仕送りが健保財政を圧迫している、それは本来は税で賄われるべきものではないか、という論旨が展開されている。

 

自分の健康保険が何なのか、よく知らない人が多いと思う。M&A全盛の世の中で会社名と健保はリンクしていない。その企業の意外なルーツが分かるのが健保である。

私が仕事で絡んだことのある買収案件で、そこそこ従業員数のある企業の営業譲渡を行ったとき、受けた側の企業が加入していた某大企業健保は受け入れを拒否。売却した側もそれなりの企業だったが、本業から遠いこともあって縁を切ったものの、健保からの切り捨てはさすがに躊躇した。結果として健保と資本のギャップが発生。

 

自分の子供が勤めている企業の健保を確認して驚いたこともある。大きな公益企業のグループ会社だが、その親の社名を受けた、いわゆる冠会社にあたる。それでも会社本体の大規模健保組合の加盟とはなっていない。そうなると協会けんぽの加入とか、業種別健保の一員とかにならざるを得ず、なかなか大企業の健保はハードルが高い。

いまは異業種に参入することこそが成長戦略の一環なので、業種別の色合いの濃い健康保険組合の切り分けと、多角化した企業グループはそもそも親和性が低い。もとからいる従業員と、M&Aで入って行く人で、同じ会社でも健保が違うこともある。ある業種では全国レベルの業種別健保のほかに、大阪だけ独立の業種別健保となっているため、一つの会社で大阪支店勤務者だけ別健保になっているケースもある。健康保険は企業単位と言いつつ、もはやモザイク模様なのだ。

 

私は60歳が近づいていて、いよいよ年金の払い込みもゴールが近づきつつある。年金は原則60歳までだが、健保保険料はここからが「本番」でボディブローのように効いてくる。国民健康保険は自治体で違いがあるし、前年の収入、家族構成のことなど、あまりにもバラツキがあり過ぎて不公平感が消えない。失礼な言い方かもしれないが、収入・所得のコントロールができる自営業の人ならいいが、勤め人には納得しにくい。

 

私が50歳台になった頃は、年金こそが世の中の流行りのテーマで、2009年の民主党政権樹立の原動力の一つにもなった。制度の改善は逐次なされているし、組織運営も少しずつ見直しが進んでいるのかもしれない。しかし、所得税増税社会保険料負担の増大が進む中で、詰めれば詰めるほど60歳過ぎの働き方=収入、年金等の社会保障、健康保険をどう選べはいいのか、難しい課題になってきた。安い給料でも勤め人ステータスを捨てなければ、健保はまず問題にならない。しかしそれは厚生年金を諦める、少なくともその多くのメリットを捨てることを意味する。

私は60歳を過ぎれば勤め人を辞めて被用者保険から離れることで、いままで積み上げてきた厚生年金のメリットを享受するつもり。それは同時に国民健康保険に行くか、自分が勤めていた企業グループの健康保険を全額自己負担で使うか、大きな選択を迫ることを意味する。一人仕事で収入を上げたいなら、後者に頼らざる得ない。そういう計算をしないとうまく転進できないことがよく分かった。

 

健保の問題は年金以上に奥が深い。個人ごとの受益と負担の関係もまたバラバラ。現役とリタイア層、後期高齢者年代というギャップもある。難度は極めて高い。世界に誇る立派な国民皆保険だが、その維持は大変なことになってきた。