やっぱり来ました所得税改革 その2

今日発売の週刊ポストに「騙し討ち大増税」と題して、10月選挙直後の税制調査会財務省が配布した資料を取り上げている。

 

財政再建至上命題財務省は、こういう増税姿勢になる。つまりは消費税収はもっと欲しい、団塊世代は恵まれた時代にキャリアメイクできたのだから、年金課税と相続税増税で国庫に還元すべきだし、いまの若い世代で大きな収入を得ることができた成功者は、大きな担税力を持っているはずだ、云々。

いまの所得控除の仕組みが高所得者に有利だというなら、累進課税をやめたらどうか。累進性がある限りその仕組みは変わらないのではないか。ゼロ税率のポンチ絵も税調資料にあったが、年金も増税、給与所得も増税介護保険料も負担増ではもう、収入を少しでも増やそうという意欲は消えていくのではないか。そういう意欲をかき立てないと日本経済は再点火しないのでは?

 

週刊ポストの結論は「東京五輪後の大不況の到来」だ。しかし、もっと怖いことがある。

 

安倍さんは3%の賃上げだとか、教育無償化で企業に3千億円の負担だとか言い込んで、経団連会長もそれに協力したいような発言をしている。言われたら払うんだな、なら党の議論は要らないな、と小泉進次郎さんがツッこんだあの一幕だ

そういう政策とこの税制改革方針は噛みあっているのか? 財務省の案では、ゼロ成長でも税収の仕組みが変わって税収が恒久的に増える仕掛けを用意している。経済財政諮問会議では「生産性革命」とか言ったワーディングで3%賃上げを正当化しようとしているようだが、時間外勤務の規制が強まれば現に収入が減るわけで、そのカバーみたいな議論も出ている。安倍さんの思惑でどう財政収支が改善していくのか、あまりはっきりしないが、バッサリ言えばそんなことはあまり考えてもいないのだろう。政策の整合性などすり合わせる必要なんかないし、本気でやれば役所相互の利害も表面化する。そんな調整に政治は誰も汗をかこうとないのが最近は現実になっている。

 

政治家には、財務省の応援団もいれば、財界の守り神もいるだろう。安倍さん命の親衛隊もいる。しかし国民の気持ちをなだめて不人気な政策を飲ませる役目も必要なわけで、安倍さんの3%も3千億円も耳障りはよくて、選挙民には痛みを感じさせない配慮が行き届いている。ならば誰が国民のイヤがることをいうのか? その説得を行って、最小限でもアメを配る=希望を持たせるような施策を差し込まないといけないのでは? それが政治ではないのか。

 

選挙のときも散々書いたが、イヤなことをいう政治家はもういないのか? 権力者と国民の間を取り持って、「苦いクスリ」の税制改革をなんとか飲ませる人はもういないのか。自民党や保守勢力の政治家が、権力闘争もしない、長期的な視点から必要な不人気政策をなんとか「飲み込めるクスリ」に仕立てる努力もしない。

役所の代弁をして筋の通った政策=消費税増税を押し込んだら、民主党の野田さんみたいになるだけ。安倍さんはその反面教師をよく学んでいる。でも、イヤなことを言う役目をする人を作りつつ、それこそ国民の不満をアウフヘーベンする仕掛けが絶対に必要。いまの政権と自民党税調の幹部には、あまりにそのハラの括り方が見えず、政治家の力量が軽すぎる。

 

野党の希望・維新はもう口だけというのがよく分かったはず。ならば与党政治家は権力奪取のために戦え。戦わないならプロとして、昔の自民党のインナーのように年末の税制改正でギリギリの大仕事をやれ。前者は石破さん、後者は宮澤さん(軽いけど)。もうこんな政策決定プロセスでは国民は浮かばれない。進次郎氏の決起まで、もう何も起きないのか。