一時所得の使いみちは意外なところに その2

一時所得について税理士さんのお書きになっているサイトを見てみたら、「継続性のない、趣味的・娯楽的な所得」といった書きぶりが目立つ。馬券やクイズの懸賞金みたいなものを想定しているのかもしれないが、そんなのはレアケース。

保険の一時金、満期返戻金のように、「毎年出てくるのものでないが、出るときはそれなりに大きくて、多少は大目に見てあげないといけないタイプの所得」というのが実情と思う。それはむしろ退職所得に似ており、一定の控除を設定したうえで、その控除後の金額に1/2を掛けるというロジックは退職所得と全く同じ。

 

一時所得が退職所得と繋がるという前提を踏まえて(理論的には間違っているかも知れないが、考え方としては素直に入り込めるので、あえてそうしておく)、確定拠出年金、あるいは企業年金において、一部を繰上げでまとめて受け取るときに、一時所得の適用が受けられる。これはまず年金として分割で受け取り始めるというのが大前提。その残額を一括で受け取ると退職所得扱いとなり、その発生年は基本的に退職したときに遡って、全退職所得を通算して税額の計算をやり直す。ところがいくらかでも年金受け取りを残せば、その繰上げ請求年の一時所得になる

 

そんなことは全く知らなかった。DC受け取りに関する日経の特集記事を何度か読み返して、さらに自分の企業年金規約を読んでみて、初めて気が付いた。そうすると公的年金の雑所得の控除に加えて、一時所得の控除分までは、課税なしに受け取れる。受け取れるというより、自分の手元に戻してこれる。

年金・退職金とは、老後資金という目的のもと税制の優遇を受けていたおカネを、自分の手元で自由に動かせるおカネに振り替えるプロセス。①拠出したおカネを課税所得から控除するメリット、②運用期間中に得たキャピタルゲインインカムゲインに課税されないメリット、そして③退職所得・一時所得の控除額をフルに使って手元のフリーマネーに替える仕掛けが重要。この③を使いこなすのが、われわれ60歳直前世代の課題。おカネには色があって、使えないカネはカネではない。絵にかいたモチを膨らます運用に血道を上げるより、クレバーに手元に落とし込むことがよっぽど本当の考えどころなのだ。