会社員を辞めてみた その2

その1では、給与所得者であり続けることのメリットが失われつつあることを説明した。もちろん子育て支援など、社会的にサポートされるべき理由のある層・世代は、われわれのような中間管理職からアラ還を迎えた世代とは違った状況にある。ここでは昭和30年代前半に生まれた、団塊の世代の通り過ぎた跡を歩んだ世代が経験していることに基づいた判断としてご理解いただきたい。

私の場合、たぶん多くの同世代の勤め人がそうだと思うが、65歳まで、あと5年程度は働ける状況にあった。企業には法令上雇用義務がある。ただし給与はかなり引き下げられるのが一般的な世の仕組みになっている。私の場合、恵まれたことにおそらく給与レベルはあまり下がらない。しかし、そのことが企業の側からみれば、フルタイムで現役並みの働き方を求める錦の御旗となっている。

 

そこそこもらっている限り、いや給与レベルとは関係なく、与えられた職場でしっかり働くのは当たり前のことで、それに不満をいうつもりはない。自分は一生懸命やってきたと自負しているし、個人的には、なんだかんだと言い訳を作ってしっかり働こうとしない人たちへの不満の方が強かった。だから、この年齢で体力・気力が充実しており、モラールが失われていない人への負担はいっそう大きくなる。

他の人たちの言い訳の後始末をやるのは、あと数年しかないキャリアの時間軸の中では全くつまらない。若いときに企業の中枢の仕事で経験を積むのと、いい年になってから経営層に上がる見込みもないのに管理仕事に関わるのは全く違う。現場仕事なら、それなりの過去の経験も生かせるし、個人の裁量も効く。日々の仕事を日々、楽しく終わらせて行ける。

モラルハザードと言ってもいい。私の在籍していた会社はいわゆる「第二の職場」で緩さが蔓延していた。そこでトップが代われば、とうぜんいつまで甘いことをやっているのか、という変革マインドが燃え盛ってくる。しかし、所詮は動かない人は動かない。懸命にやる人は、頑張らない人には絶対に勝てないという矛盾がつきまとう。彼らも身分保証があるからクビにならない。

 

会社を辞めればすべて自分の頑張りは自分に返ってくる。他の人のカバーをする必要はなくなり、自分の稼ぎをしっかりと作っていけたらいい。もちろん、どこまで行っても人の世は貸し借りの世界なので、それはそういうものと受け止めたい。自分が楽しく働けなければ意味がなく、他人をサポートすることも自己実現のうち。助けてもらうことも多々あるわけでお互いさまだ。それでも企業の、アラ環世代でのモラールの欠如はまことに遺憾な事実。

 

そういった情緒的なことは別にしても、経済的にも給与所得依存者の呪縛を抜け出るメリットは存在する。とくに企業年金iDeCo、私的な年金保険などの自助努力をしてきた人には絶対に知っておかなければならないことがある。次回、その話に入る。

会社員を辞めてみた その1

長らくブログを更新していなかったので、自分でも唐突と思うが、実はこのタイミングで会社を退職した。60歳。いまの世間の流れから言うと少し早い。

 

ベースの環境を説明すれば、既婚、子どもは2人いるが各々経済的には独立。親世代はもうだれも残っておらず、配偶者の同意さえあればサラリーマンを辞めることに障害はない。経済的な面は、これはいかに気楽に生きられるか、主観的なレベルの個人差が大きいので何とも言えないが、私の場合は最低限度のセーフティネットはできた。

セーフティネットとはなにか? いくら貯蓄があってもそれを取り崩すだけではセーフティネットがあるとは言い難い。人生100年の時代ではいつかは蓄えは尽きる。公的年金は重要だが、現在60歳の男(1958年生)が特別支給の老齢厚生年金にありつけるのは63歳からだ。私の場合は不動産所得が前年から発生して、そのおカネが一つのセーフティネット。借り入れはなく、都心部流動性の高い住宅物件なのでいざとなればそれを売れば何とでもなる。65歳からは基礎年金、厚生年金、企業年金の3つが稼働するので心配はない。

 

一方でいまの仕事を放り出すことについては、2つ問題があって、

①勤務先とのいわば「貸し借りの関係」の中で不義理をしていないか

②辞めて失うものと、辞めてから得られるものとの関係はバランスが取れているか

はじめの「貸し借り」「不義理」という懸念は、いまどきの雇用関係ではほとんど意味をなさないかもしれない。退職代行業がまかり通る時代では、退職ついてのハードルは慰留等への対応などの不毛なやり取りであって、そのような雇用関係ではもういつ思い切るか、それを容易に実現できるかが問題だ。われわれの世代では、長期的な関係をこちらの一方的な都合で離脱することに、チームの一員としてわがままと取られないことが重要となる。いい思いばかりしてさっさと辞めて、と後ろ指を差されない工夫が要る。ここで人間関係がバッサリ断ち切られるわけではない。

 

2つめは誰にでも当てはまる。経済的に失うものが大きければ勤めは辞めない。当ブログで何度もこの点を主張してきたのだが、最近の税制・社会保険制度の改正では、あまりの一定の所得階層からの深掘りを進めたため、経済的なメリットはどんどん失われていった。実は私の場合は、2018年の確定申告で、配偶者控除がゼロになった。

 

配偶者控除の分かれ目は「合計所得金額9百万円」である。9百万円を超えると配偶者控除が縮小し、その分税金が増える。その他の控除を勘案すれば所得税率23%、地方税10%の段階にあたる人が多いと思うが、これだけで33%、さらに重い厚生年金保険料が賞与・給与に関わらず乗っかる。仮に年収が給与収入だけで1千万円を超えるような好待遇の高齢者サラリーマンは、実感とすれば9月以降はほぼ額面の半分を政府部門に還元している。

9月以降というのは、1月から給与収入を積み上げていって、最初はとうぜん税金が取られ過ぎの状態が続く。例えば、額面の月給が50万円で1月から3月まで働いて退職すれば、その年その他の所得がない場合には、源泉徴収された所得税はほとんど還付されるだろう。額面給与が変わらなければ源泉徴収テーブルは変わらず、一定の料率で徴収され続けてその総和がほぼ、出来上がりの年間所得税額に一致する。限界税率適用で積み上げて得られる総税額を、12回プラス数回の賞与へ、いわば割り算でフラットに平均化して賦課する仕組みが源泉徴収制度だ。どれだけ実効税率の累進性が立っているのか、政府税調でもそのような資料をみたことがないが、最後の数か月の稼ぎの結果大きな課税が発生する(というか正当化される)。ならば一定の所得に達すれば、そこで限界税率が実効的に40%くらいになってくるので、稼ぎを止められたらいい。

そんなことは実は、自営業者なら誰でもやっていること(のはず)だ。サラリーマンは日々の業務から逃げられないので自分の収入をコントロールできず、したがって納税額もコントロールできない。唯一できるのは、途中で退職する場合だけだ。このカードをいつ切るか、定年まで機械的に勤務するとその裁量すら(戦略的には)一度も使えなくなる。

私は2019年をまるまる働くと、自分の割に合わない公的負担を負わさると考えた。それがその先も数年続くと思うとあまり楽しくはない。逆に言えば、辞めて失うものは確実に小さくなってきたのだ。

7月の参議院選挙の直前に2018年の税収が発表されたが、60.4兆円でバブル期以来の記録を更新、所得税は4千億円の「上振れ」と報道された。これは上振れでも想定外でもなんでもない、確実に取れるところから取る政策は、安倍政権の発足以来この政権の意図することと関係なく浸透している。なにが問題かたぶん政権の中枢は理解していない。その一方で財務省は10月に消費増税まで手に入れる。政権との距離が近いとも言えないのに、ここまで持ってきたのはさすがだ。これらのことを指摘しないのはメディアの怠慢ではないか、不作為での財政当局支援ではないかと疑いたくなる。一連の働き方改革の中で霞んでしまった論点だと思っている。

堅い表現で説明すれば以上のような事情で、その気になればサラリーマンとしての適正な働きと稼ぎは自分で決められるはずだ。そういう判断で給与所得のコントロールに挑戦した。実は失うものは額面より遥かに小さい。では得られるものはなにか。その2へ続く。

 

 

WIN5史上最高額の4億7千万円馬券を狙った人

2月24日開催のJRAで、ついに4億7千万円もの配当が飛び出した。羨ましいとか、税金が大変だとか、勝負の実感に乏しい?コメントが飛び交っている。

 

私はWIN5を取ったことがない。24日も少しだけ買ってWIN1で終わった。当てたいが、少しずつ長く楽しめる競馬を目指しているので、当たったとしても10万円くらいの配当しかない組み合わせしか買ってない、と思う。

 

この4億7千万円を取った人が、例えばおまかせ(JRAの言う「ランダム」)で買った可能性は限りなくゼロに近いと思う。24日の対象レースの頭数から計算するとその確率は約26.6万分の1。総投票数は674万票だから仮に全投票がランダムだったとしても、25票程度にしかならない。

WIN5を初心者がお試しで買うことはあっても、馬券をやっている人なら自分の予想で買うはず。5つのRから2頭ずつ選んでも2の5乗で32通り、3頭ずつなら3の5乗なら243通りに跳ね上がる。50点程度の購入は当たり前で、そうだとすると購入者数は13.5万人。1票2票をランダムで遊ぶ人もいるから実数はもっと多いと思うが、とても26万票はないだろう。26万分の1を出せるほどは売れていないはず。

 

WIN5ファンで大きいのを本気で狙う人には、この2月24日は実は狙いやすいレース構成だった。最初の阪神10RすみれSと、最後の中山メーン中山記念は少頭数で、しかも勝つ可能性のある馬は絞られていたからだ。

すみれSは6頭立てで、実績から言えば勝てそうなのはアドマイヤジャスタとサトノルークスだけ。アドマイヤジャスタがモタモタしたが実際上位人気の1着2着で決まっている。しかし、最後の中山記念までの間に入る3つのRは、かなり荒れてもおかしくない。

中山10RのブラッドストーンSダート千二百Mは単勝万馬券ブービー人気馬が勝ったが、2走前は京都で勝ち馬と0.8秒差。来てもおかしくない。

次の小倉のメーンレースは芝千二百Mのレースで、前走着順が悪くてもそう時計の差はない。ローカル開催では馬の気持ちも変わってくるし、何からでも入れる。

阪神メーンは重賞だが、これも芝千四百Mで力のある馬ばかりだからなんでもあり得る。勝ち馬はクラシックに乗った馬(3年前のダービーでマカヒキの6着)で実力はある。とくにスマートオーディンの場合は勝ったレースの距離が千八百と二千二百だけ。千八を勝てる馬は千四に強いというのは割とあるハナシ。18頭の11番人気でも勝っておかしくない。

この3つのRはそれぞれ、16頭、14頭、18頭立てで全部買えば4,032通り、40万円強となる。最初のすみれSを2頭に絞ればここまで投資額の見込みは80万円強。で、最終関門の中山記念となる。何頭にマークするのか。

 

最近の中山記念ドバイWCへの壮行レースになっていて、強力メンバーが出てくる。今年は11頭立てとなったが、うちG1勝ち馬が5頭。それ以外に勝ち目があるのは中山得意のウインブライト。実際この6頭が上位人気を形成し、レースの着順も6頭で6着までを占めた。しかし勝ち馬は1頭だけで、それを外しては元も子もない。

仮にWIN5で6頭をすべて選べば、馬券は80万円×6=480万円強となる。WIN5の配当が500万円超えとなるのはざらで、3千万円から5千万円を狙える馬券だ。仮に6番人気のラッキーライラックの休み明けを嫌えば5頭で済む。5番人気のウインブライトは、例えば東京コースでなら切れるだろうが、ここ中山では怖くて切れない。私の仮説ではこの馬券を取った人はここで上位人気5頭に絞って、ラッキーライラックを切ったことになる。これで400万円馬券での大勝負だ。

ここまで書いた想定どおりだとすれば、この人は(チーム買いかもしれないが)、最初のすみれSをサトノルークスの勝利で割と楽に通過し、2つめの中山ダートで単勝140倍が来て大勝利を確信したに違いない。3つめの小倉メーンも12番人気と荒れてますます力が入るとともに、最終の中山記念を絞ったことが少し気になってくる。

4つめの阪神メーンも11番人気。ここで残り票数は(おそらく)この人の買った中山記念の5頭が残っただけだろう。そこまで予想で当てた人が複数名いるとは想定しにくい。そして、運命の中山記念がスタートする。人気どおり収まるか。

 

そう思って中山記念を見れば、4億7千万円を手にするまで「苦痛」がどんなものかしのばれる。ここで展開した仮説通り5頭選んでいたとして、その中に勝ち馬のウインブライトが入っていたのだから、たぶん切ったのはあのラッキーライラックだ。逃げ馬を交わしてラッキーライラックが内ラチを走る姿がどんなに映っただろうか。ディアドラもスワーヴリチャードも、エポカドーロにも勝てる感触はなかった。最後に来たステルヴィオは、届かない。ウインブライトの差し込みを待ちながらどんなに怖い思いをしたのだろうか。大勝負師に畏敬の念を抱かずにいられない。

 

 

 

 

有馬記念はすべてを包み込む

今年の有馬記念は3歳馬ブラストワンピースの勝利。グリーンチャンネルの番組で岡部元ジョッキーが、もし騎乗できるとしたら、というMCの問い掛けに即答したのがこの馬。繋がりの深い厩舎のレイデオロを上げずにこちらなのか、という気がしたが、、。

私は性根が良くないので、ウラ読みして「オレならもっとうまく乗る」と言っているようにも聞こえた。ずっと乗ってきた池添Jにはたぶん聞きたくもない指名だっただろう。それでもとにかくレイデオロの前でレースをして勝った。さすがに難しいオルフェーブルで有馬を2回勝っただけのことはある(その全兄でも1回)。ストップザデムルメ、池添さんがよくやった。

 

オジュウチョウサンはこれからどうするのか。キセキの逃げはそれとして、4角で宝塚記念勝馬のミッキーロケットと叩き合って譲らなかったのは見事だったし、このメンバーで9着は立派。誰も批判できない。

せっかくだからオーナーの望むようなレースをさせられる乗り役を配して、もう1年やればどうか。軽ハンデで日経新春杯ダイヤモンドSに出て賞金加算ができたら、春の天皇賞に向かえばいいのはないか。武さんも一仕事終えたという感覚だろうから、今後は関東の中堅から若手で、藤田菜Jとは言わないまでも、兄弟子の丸山Jとかもう少し若いクラスでは石川Jとか、そういう人たちに乗ってもらったらいいのではないか。もちろん石神Jでもよいと思うが、障害に戻らないならもう次の人でいいのではなかろうか。超一流の馬に乗る経験をもっと積ませることが大事だと思う。

 

サトノダイヤモンドは名馬だったが、ちょっと歯車が狂ったらもう第一線に戻れなくなった。いい種牡馬になれると信じている。マカヒキも中距離路線での現役はかなりしんどくなってきた。ダービー馬をマイラーに仕立て直す訳にもいかず、ワンアンドオンリーは見るだに辛かった。サンデーサイレンスの血の飽和が、ディープ産駒やハーツ産駒にも陰りを及ぼしていると言えば言い過ぎか。

SS系ではやや異形のステイゴールド血統に加えて、昨年や今年はハービンジャーロードカナロア。面白くなってきたし、サンデーサイレンスの席巻した平成から次の元号で違う血統が出てくれば面白い。香港競馬も楽しいし、視野が広がってかつ奥も深い。今年もありがたく楽しめた暮れの有馬記念でした。

 

税制改正の季節 その2

今年の税制改正はほとんど盛り上がりがなかった。来年、2019年10月に消費税率が引き上げられれば、いわゆる軽減税率の問題が出てくる。これがキャッシュレス化の促進と絡み合って、プレミアム付き商品券の問題に波及している。税の世界の場外乱闘である。

給与控除の切り下げ、公的年金控除と給与控除を関係づけて公的年金控除の絞り込み、配偶者控除の縮小を始め、取れるところから取るという仕掛けはガッチリできてきた。

年収1千万世帯が狙い撃ちされて、可処分所得が切り下がっているという分析が、日経ビジネスで紹介されている。明らかにやり過ぎで、そう遠くない将来にこの所得層の勤労意欲は崩壊する。しっかり勤め人として活躍してきて子育ても終えた人たちは、もうお役御免とばかりに切り捨てられた、というのが実態ではないだろうか。

 

政府税制調査会では、老後に備える資産形成にについて、企業年金個人年金に係る税制、貯蓄・投資等に係る税制について包括的な比較・分析を行っている。

公的年金だけでは老後の生活を支えられないという前提に立って、いかに個人の自助努力をサポートしていくか、という課題だが、やはり税収が欲しいというのがホンネ。超低金利と日銀のファイナンス国債マネジメントを行いながら、個人の投資の果実にも分け前を取りに行くという、ガメツイ政策課題を追求している。さすがである。

 

考えてみれば2019年は選挙イヤー、今頃大きな税制改正はあり得ないのである。統一地方選は4年ごと、参議院選挙は3年ごとで最小公倍数の12年ごとに選挙が忙しい年が必ず回ってくる。亥年は選挙年、だから戌年税制改正は盛り上がるシーンなどないのである。消費税率は来年10月に引き上げられる気がしてきた。

 

 

 

 

 

明治安田生命のドル建て一時払い養老保険を解剖する

明治安田生命のドル建て一時払い養老保険を買ってみた。営業の人から金融商品を買うのはホントに久しぶり。25年前の年金保険の満期が近づき、その処理で(いわゆるお宝保険で大きな利益が出ているから)いろいろお願いしており、そのお返しの意味もある。11月のこのドル建て保険の予定利率は年3.3%。10年据え置けば、投資時の130%を超える米ドルが手もとに戻ってくる。外貨に投資しても、外貨預金ではちょっと為替が好転すると売ってしまいたくなる。少し腰を据えた外貨投資と位置付けた。

 

この商品は買ってみて分かったことがいくつかある。ネットでもいくつか商品性の紹介をしているサイトがあったが、少し情報を整理してみた。

 

 

 1.課税は金融商品と保険のハイブリッド

 

大むかし、金利が高かった時代に一時払い養老保険を買ったことを覚えており、当時は一時所得で控除が認められる50万円までのゲインに止まるよう、元金額を調整して売られていた。あれは何年ものだったろうか。その後、一時払い養老保険は保険商品ではなく金融商品だろう、ということからその後は利子課税と同じような課税方式となった。

今回の購入で分かったことは以下。知っている方にはくどいハナシで申し訳ございません。

  • 金融商品なみの源泉分離課税になるのは契約日から5年以内。5年超になるとその他の保険商品と同様の課税となる。
  • この商品のキャッシュフローは1回支払って、戻ってくるのも1回だけ。つまり預金のような利息もなく、債券のクーポンもない。だから購入時のドルがベースになって、満期の10年後まではいっさいゲインを認識しないのかと思っていた(実質は割引債=ゼロクーポン債だから)。しかし途中解約でも円に引き直して課税する。5年以内なら源泉分離課税、5年超では一時所得になる。
  • 満期まで持ったときは、満期日の為替レートで円換算してゲインを一時所得扱いで認識する。その時点でドルを実際に売る売らないは関係なく、未実現利益でも課税される。保険商品としての寿命が終わったときにいったん清算して、その後外貨預金のままで持つならその課税ルールに従う。

 キャッシュフローが1回ならゼロクーポン債と同じだが、割引債なら購入時に償還差益から源泉徴収される。一時払いでまとめて返還する保険はいずれか支払いが起きたときに課税が出てくる。

 

2.この保険を効果的に使うための考え方

 

ます採り上げのメリットは、

  • 予定利率が銀行預金に比べると高い。例えばソニー銀行のドル預金は3年もので年利2.5%。これに比べると年3.3%は有利。ただし将来の金利はどうなるか分からないので、実は低位固定となってしまうリスクも。
  • 2年据え置けばドル建てで100%戻ってくる。これは外貨預金なら当たり前だし、預金は金利も付くから銀行預金に比べるとこの保険にメリットはない。しかし他の保険商品に比べると悪くなく、常に投資したドルは100%手もとに戻せる。

デメリットはなにか。

  • 10年間も全くキャッシュフローを生まない。CFを生んだらそのときに課税される。いつ手仕舞うかがすべてという商品で、判断の難度は高い。
  • 為替が往復で1円(行き50銭、帰り50銭)抜かれる。

 この保険は買ってから最初の2~3年がまず勝負で、ここでドル高に振れているなら解約して円転するメリットが出てくる。しかし全く同じことを外貨預金でやれば、利息が取れてかつ為替差益も取れる。外貨預金の為替差益は雑所得なので、サラリーマンなら20万円までは無申告でOK。一方でこの保険を使えば金融商品並みの20%(+復興特別所得税)となる。少額でも課税されるので銀行預金に比べるとメリットは乏しい。

 しかし雑所得を申告する必要のある人(確定申告する人で総合課税の税率の高い人)には、ドル建て一時払い養老保険なら源泉分離で課税関係が終わるから、そのことはよいことかも知れない。

実質的な為替差益を投資信託や株式を通じて得ようとすることと同じ。ではあえて保険商品にするメリットはなにか。株や債券と違って、他の金利リスクやら政治・ビジネスなどのリスクから切り離されることか。

かりに数年後の大きなドル高を予想するとして、他のリスクに煩わされることなく、確実にその果実を小さな課税で得たいと思うなら、この商品は使える。外国株そのものや外国株式インデックスファンドで為替差益を狙っても、他のリスクも混入する。この養老保険なら為替リスクだけを切り出せる。

 

3.時期によって戦略を立て直す。

純粋にドルの高値を効果的に追えるものの、その有効期間は5年だけ。

まずは2年後に為替差益を大きく抜けるならいったん手仕舞って、再投資を考えるのがベストシナリオ。2~5年はそんな感じて見て行くのがベター。大きなドル高になるなら(なるとみるなら)手もとにドルを戻したらいい。

そのチャンスが到来せずに、契約後5年を過ぎると今度は保険商品として一時所得になる。今度は他の一時所得との見合いを測りながら、利益を出さねばならない。控除枠50万円を念頭に置けば、この保険の元金はせいぜい2百万円がいいところ。それで2割抜けるとしてゲインが40万円となるので、その辺が税のメリットの限度。

8年程度も経てば、もう10年の満期を意識した方がいい。償還は130%。30%も乗っかってくるのだから、よくよく見極めが必要。先行き円高が確実に見通せるならその程度の年限でも手仕舞ってもいいが、実際には7年から8年経過時点では、もう10年持ち続けるハラを括る方がいい。

この保険は自分の課税状況を確認しつつ、いつどうやって手もとに戻すか考えどころ満載。預け入れ限度は毎年2百万円でいい。狙いを絞り込める投資ツールとしては面白い商品。

 

 

税制改正の季節 その1

またしても税制のシーズンがやってきた。1年前は大きな改正が決まって公的年金控除と給与所得控除のダブりが狙い撃ちされた。これまでは所得種類に応じた控除があり、その他の社会保険料控除や人的控除を差し引いて課税ベースが決まってくる。

 

勤め人なら給与収入、自営業者なら事業収入、大家さんなら不動産収入、そしてリタイアした人には雑収入(公的年金に係る)。公的年金控除を取る人は年金生活者であり、給与所得控除を取る人はサラリーマン。青色申告控除を取るのは自営業者・事業的規模の大家さんであり、それぞれのバランスを取って控除が決まっていた。自営業者は収入の捕捉に漏れが生じやすく、また必要経費も柔軟に自分で決められる。

事業収入には帳簿の正確性担保と引き換えに青色申告控除を認めるが、控除自体は貧弱。サラリーマンの給与収入はガラス張りであり、引き換えに大きな概算経費としての給与所得控除をもらっていた。

去年の税制改正はそこに切り込んで、給与所得控除の縮小に大きく踏み込んできた。今年の政府税調でもそのトーンは変わらず、所得種類ごとの控除体系から、個人ごとの控除に切り替えて、働き方の選択について(勤め人か、フリーランスかなど)中立にするという。

 

私は日本でいう中堅層だと思っている。子育ても終わったので家族単位の控除は縮小し、税負担を適切に行っている。しかし、60歳となり、年金受給を目の前にして、おカネの回りの悪さに辟易している。収入が減っても毎年のように税・社会保障負担が増えて、生活の閉塞感がハンパない。

そこで、給与所得、自営者としての所得、年金からの所得などに分散して稼げば、すべての控除を有効に活用できるのでとても効率的に稼げるのではないか、という結論を導いて、そのためのアクションを取ってきた。

今年はやっとの思いで不動産収入にメドを立て、半歩前進。来年からは年金の一部を受け取り始めるので、援軍は続々。やっと給与収入の一本被りから抜け出せる見込みがついた。

あとは個人ごとに違う条件で、最適な収入ポートフォリオを組み上げるだけ。必然的に今のフルタイムの勤めはそう遠くない将来に手仕舞って、もう少し軽い働き方に切り替えることになる。これは「働き方改革」であり「収入ポートフォリオ改革」なのである。あらゆる知識を使って税の極小化を図る。財務省に負けるわけには行かない。一生懸命に働くことから得られるより良い生活を、給与所得控除の見直しで遠ざけたのは財務省と、その意に従う一部の学者さんたちである。

 

この年明けには自分の不動産所得、家族の不動産処分に伴う申告、住宅取得に伴う申告を作成することになる。少しずつ、またこのタイトルで思うことを書き連ねたい。